『世間のひと』

鬼海弘雄

筑摩書房

2014年3月発売


見かけたのがネットだったら、手を出していなかった。本屋に行って本を買う意味が炸裂した一冊。福岡「MUJI BOOKS」。岡本太郎を読んでいたら、目の片隅に何度も入り込んできた。数冊置いてあるから売れてるのか?とりあえず。とりあえず、まずはキープ…だったつもりが、後から候補に上がってくる本を次から次へとなぎ倒して、結局最後はレジまで押し込まれてしまった。力強いなんてもんじゃない写真集。

 

浅草行くのが怖い…実際すれ違ったら、絶対目を合わせられない。個性的なんていうフレームには収まりきらない。そんな人達が多数登場。写真だけでも充分に伝わってくる。でも、この写真集の魅力は写真だけじゃない。カメラのレンズを向けている鬼海弘雄さん。被写体とのコミュニケーションから生まれた、鬼海さんが添えた一言。その一言が、それぞれの人の魅力をさらに引き出している。隣り合う写真。思わず声を出してしまった、構成のテクニックにも舌を巻いた。「小さいことを積み重ねるのが、とんでもないところへ行くただひとつの道」。大好きな野球選手の名言。それを体現している一冊だと思う。所々に挟まれているコラムもとても良かったです。

 

 

『本の街あるき NO. 53』