『サービスの達人たち』

野地秩嘉

新潮社

2016年3月発売


数年前。お店に迷惑をかけないように予約時間少し前に到着。そこから30分、特に説明もないまま待ちぼうけ。「お客さまは何かひとつの間違いに対して怒ることはないのです。怒るには何らかの伏線があります」。10年近く通って、気心くらいは知れてると思っていた美容室。何事もなかったかのようにカット終了。それ以来、もう行ってない。「絶対にクレームはしません。これくらいの接客ができないのならやめちまえと心のなかで思うから」。本を読んでいて思い出しました。

 

カフェ店主、ビジネスホテル支配人夫婦、カリスマ美容部員…様々な職種のサービスの達人たちが登場する一冊。「飛び込み営業とは話術が必要な営業方法ではなく、へこたれることなく歩くことだ」。冒頭一発目のベンツを日本一売る男。この方を一番に持ってきてくれたおかげで、本の要点を一気につかむことができた。それにしても、著者の洞察力の鋭いこと。痒いところに手が届き過ぎて怖いくらい。相手の気持ちに気付くことができるか、素早くアクションを起こすことができるか。気持ちが引き締まる一冊でした。

 

 

『本の街あるき NO. 29』