『下北沢について』

吉本ばなな

幻冬舎

2016年9月発売


去年の夏。東京「B&B」に行った時に見かけました。この時は小冊子でネット販売はなし。下北沢に来ていたけど、お邪魔してるという感じだったから買わなかった。「自分がほんとうに困ったときに夢のように解決を描いてくれたことがある」。吉本ばななさんがいう本の神様。だとしたら本の神様はいるのかも。倉敷「廣文館」で購入。

 

昨日まで。一週間前まで。数日前まで。今そこにいた人や、今まであったものの喪失感を日々感じずにはいられない(年を取ったのではなく、人生経験を重ねたんだと思いたい)。ここ数年、そういうことを強く意識するようになっていたから、同じようなことがこれでもかと本に書かれていてびっくりしました。そして嬉しかった。「そのドアを開けたらすぐに、あの頃の暮らしに戻れたらどんなにいいだろう」。だからといって、そんなことができるわけもない。でも、同じことを考えている人がいた。これだけでも十分前に進める。孤独に生きていかなければという強迫観念がどこかであったけど、これからはやっぱり人と繋がりながら生きていきたい。去年ではなく「今」この本に出合えてよかった。本の神様に感謝。

 

 

『本の街あるき NO. 37』