『NUMBER 974号』

雑誌

文藝春秋

2019年3月発売


2019年3月21日。細かくは思い出せなくても、その時に湧き上がった感情、テレビの前に広がる光景、その場に流れていた空気などは鮮明に記憶に焼き付けられた。引退会見から数日。一日たりとてこの人のことを考えなかった日はない。イチローが引退したって世界は回る。引退したってイチローはイチローのまま。ただ1日1日、どんどんあの日から遠ざかっていく。元号だってもう変わる。淡々と進んでいく毎日がどこか悲しいし寂しい。

 

「ICHIRO OPENING 2019」。会長付特別補佐になったのが去年の5月。気の遠くなるような膨大な時間があると思っていたら、あっという間に月日は流れてここまできた。昨年と同じく、今回もいよいよの始動を祝うスペシャルな特集。同年代の選手や後輩、先輩にチームメイト。様々な人が諸手を上げて絶賛称賛。クレバーに書き始めたライターの文章も、締め括りにはどこかポジティブなトーンに変わっていた。誰もが東京開幕2連戦を経ての今シーズン、さらにその先のシーズンを本人以上に見据えていた。今回も見切り発車な特集。それ見たことかなんて言わない。ただ、予想が外れたことだけが悔しくも悲しくて寂しいだけ。