『東京のうまいもの』

池波正太郎 

平凡社

1996年6月発売


「野菜サラダといえば、ポテト・サラダである。これもうれしい」。不思議とおいしさが文章から伝わってくる。池波正太郎さんの文章を読んだときから、この感覚はいまだにずっと続いています。どんなに細かく味について語ることができたとしても、この人を越える文章を書くことは難しいと思う。池波さんが「うまい」と書いただけで、どんな料理もうまそうに見えてくる。 

 

先日感想を書いた、「あなたの町の生きてるか死んでるかわからない店探訪します」の流れで読んだ本。「あなたの町~」があまりにも強烈な内容だったので、自分の本に対する味覚が狂ってしまったんじゃないかと心配していたんだけど大丈夫のようでした。どうやら池波さんが味覚を正常に戻してくれたみたいで。池波さんの食に関する著書から再編集した一冊。「見て美しく」と解説に書いてある通り、すべてオールカラーで紹介されている料理の写真がとても食欲をそそる。そこに添えられる池波さんの文章もあいまって。なくなっているお店もあるけど東京に行くときはこの本を参考にして、ぜひ池波さんが感じた「懐かしい味、細やかな人情」の追体験をしたい。