『濃い味、うす味、街のあじ。』

江弘毅、奈路道程

140B

2016年7月発売


異動届を出そうとしていた。本気で大阪に住みたいと思っていた。音楽に狂っていた時期があったり。とにかく関西、とりわけ大阪には何度も何度も行った。いろんな思い出がある。いろんなこともあって足が遠ざかってしまっているけど、ページをめくっていたら、ひさしぶりにあの頃の憧れがよみがえってきた。よみがえってきた場所は関西じゃなくて関東。神奈川の「箱根本箱」で見つけて購入。大阪を通り過ぎて読み終わった場所はここ岡山。ややこしいわ。

 

大阪と入れ替わるように、ここ数年で一気に親近感を持つようになった高知。高知県生まれの画家、奈路道程さんの味のある独特なタッチのイラストと、「もとよりこの連載に書くために店に行くこともしない」ナントカログのような星の数や点数だけでは到底判断しきれない、江弘毅さんの記憶という名のダシがたっぷり染み込んだ、行きつけの店を一気に書いた文章。大阪に住みたいと思うことはおそらくもうないだろう。と言うことは慣れることもない。いつまでたっても、よそもの気分でわけもなくドキドキしながら街を歩くことになりそう。通天閣のライトアップが元に戻ったらまた大阪に行きたいです。

 

 

『本の街あるき NO. 125』