『高村光太郎詩集』

高村光太郎

白凰社

1984年5月発売


松浦弥太郎さんが読んでいるのを知って古本屋で手にとった…と思う。なんてたって10年近く積読してしまっていたから。詩集とかあまり得意ではないのだけれど。と思っていたら「いやなんです あなたのいつてしまふのが──」冒頭一言で一気に引きずり込まれた。スピリチュアルとかではない。でも本を読んでいる間は間違いなく高村光太郎、その人と意識が繋がっていたように思います。

 

黒縁メガネに、はんてんを羽織って芋をむいている晩年の写真が掲載されているけど、戦争真っ只中の1900年代にニューヨークに渡米、ロンドン、パリにも滞在して彫刻や美術を学んだ、実はとんでもなくハイカラな人。そこで実際に目で見て肌で感じたものが詩にも独特な形になって反映されている。そしてどうしたって無視することはできない奥様、高村智恵子のこと。飾り気のない言葉、なんてよく聞くけど、剥き出しの感情が現在でも生々しく、それでいて活き活きと生命力みなぎっているのが、読んでいると確かに伝わってくる。素晴らしい詩集。松浦弥太郎さんが何度も読み返しているというのがよくわかった。他の作品も手にとってみたい。通り過ぎることなどできない詩人になりました。