『走ることについて語るときに僕の語ること』

村上春樹

文藝春秋

2007年10月発売


まるでワールドカップの代表戦みたいだ。ノーベル文学賞の発表をパブリックビューングで固唾を飲んで見守るあの光景。そしてあの悲鳴。あれを見て、小説に気軽に触れられなくなっている人もいるような気もする…もちろん、著書ご本人の知るところではないんだろうけど。繁忙期で仕方なかったというのもあるけど、年末からずっとジョギングできてない…香川の「リバー書房」で購入。また再開するきっかけになればと思って。

 

濃密な先入感のせいで、タイトルすら何か裏があるのではないかと勘ぐってしまった。かなり気構えていたけど、読み始めてみれば、本はタイトル通りの至極まっとうな内容。初めてまともに文章に触れることができたけど、とにかく真面目な人なんだなという好印象。丁寧で無駄の無い文章。隙が無いのかなと思いきや、ご自身の年齢や肉体のことについて、悩んでいたり、もがいていたり。とても人間臭さにも溢れていた。「走ることについての本ではあるけれど、健康法についての本ではない」。健康はさておき、そろそろ自分も走りたくなった。それから初期の作品も読んでみたくなった。食わず嫌いしているんだったら、絶対この本から入っていくべきだと思う。