『土を喰う日々』

水上勉 

新潮社 

1982年8月発売


「BRUTUS 2010年 7月1日号」の特集で登場していた小説家、水上勉さん。アシンメトリーな髪型にお洒落な服装、そして端正な顔立ち。この風貌で松茸を焼く写真に思わず目が釘付けになりました。そこで紹介されていた本書。水上さんが仕事場に使っていた軽井沢で過ごしているときに、ご自分で収穫した野菜などを料理をして述べた、そんな内容の一冊。

 

「わが精進十二ヵ月」という副題が付いてるだけあって、確かにそこに肉や魚は出てこないんだけど、これがまた全然貧乏くさくない。焼きくわい、青梅のかりかり漬け、夏大根の一夜漬け、しめじめし、馬鈴薯の田楽、馬鈴薯の串焼き…などなど、精進とは名ばかりの一緒にお相伴にあずかりたい料理がずらり。「読者にわらわれよう」、わらうだなんてとんでもない。漫画「美味しんぼ」の中で紹介されて、さらに読者層が広がったみたいで。一人の男が黙々と料理を作る姿はただただカッコいい。意図して読んだわけではないけど、没後十周年。水上さん、素晴らしい本をありがとうございました。