『世界から猫が消えたなら』

川村元気 

小学館

2014年9月発売


「部屋へ!」「スペクテイター 43号」に続く、妹の誕生日プレゼント第三弾。とは言っても、この本は数年前にもらっていたもの。いつまでも勿体ぶっていても仕方ない。この機会に一気に。郵便配達員として働く三十歳の主人公が脳腫瘍で突如余命宣告を受ける。玄関で昏倒、目を覚ますと自分そっくりの姿をした悪魔が目の前に現れて……

 

本をプレゼントしてもらった数年前は、この手のタイムリミットものが世の中にあふれ返っていた。絶対泣けると言われると急激に冷めてしまう天邪鬼な性格。しかし急激な掌返しが凄まじいのも自覚。不覚にも読んでいる途中にほろっときてしまった。「忠犬ハチ公」を家族みんなでテレビで見て、その晩布団の中で泣いたのを思い出した。感動と同時に初めて知ることになった死への恐怖。本の中身はいつも不変。人生経験が積み重ねるに連れて、本から受ける影響は自由自在に変化する。良くも悪くもこの感動や恐怖は残念ながら長くは続かない。忙しくなったりすれば、あっという間に忘れ去られる。でも本を読んでいる間は浸っていられる。こんな感情を揺り動かすのも精神衛生上、たまには悪くはないはず。小説の素晴らしさを再確認できました。