『ポートレイト・イン・ジャズ』

和田誠、村上春樹 

新潮社

1997年12月発売


文明の利器って大変にスバラシイ。タイムマシンがあるのが一番だとは思うんだけど。とにかく録音技術がこの世に誕生していてよかった。以前、CDショップでジャズの担当をしていたことがある。名前だけは一生懸命覚えた。だけど、どんな音楽や人物なのかは一切答えることができなかった。雑誌の文章を拝借しながらポップを書いていたりもした。今思えば恥ずかしいしもったいないし申し訳ない。そんなことを胸に秘めていたのかも。数年前に岡山の「古書五車堂」で購入していた一冊。

 

圧倒的なジャズに関する知識と百科事典のように飛び出す多彩な言葉。それだけじゃない。それらを長年かけて消化してきた実体験を最高のスパイスに、見事なまでの絶品料理に仕立て上げている。残念そうな顔をされるかもしれないけど、ターンテーブルではなく、パソコンで全部検索して聴いた。一度読んだくらいでは全てのジャズメンを把握しきれない。聴き飽きることもない。何度だって読み返すことができる普遍の耐久力を本も持っている。そのときに非常に役に立つのが、和田誠さんのかわいらしくてポイントを的確に捉えたイラスト。脳内イメージはこれでもう決まり。