『平翠軒のうまいもの帳』

中島茂信

枻出版社

2005年3月発売


ギンザシックスに出店するというのを以前テレビで見た。知ってはいたけど、恥ずかしながら一度も行ったことがなかった。倉敷、美観地区の中にある「平翠軒」。食のパトロン、森田昭一郎。店の成り立ちについては著者が巻末にしっかり、たいへんに面白く書いてあるから読んでもらいたい。本は「平翠軒」のカウンターに置いてあった。スープと一緒に購入。

 

「天上の美味を味わえます」。うまい、おいしいと言う人は沢山いるけど、こんな表現をする人には初めて出合った。プロだろうが職人だろうが、作った人が素人だろうがまったくお構いなし。店主が自ら食べ歩いてとにかく気に入った、うまいものだけを集めに集めたお店。その中から50品目を紹介。手前味噌な言葉は不自然なものが多いけど、森田さんの言葉はとても自然で楽しい。とにかく商品をよく食べているから知識も豊富だし、同時に食品に対しての絶対的な信頼と愛情も伝わってくる。どこからでも気軽に手に入る便利な時代になったけど、手元に取り寄せるだけじゃもったいない。食の宝箱とさえ呼ばれる奇跡のようなお店。歩いてでも行ける距離に住んでいるんだから、頻繁に何度も覗きに行きたい。

 

 

『本の街あるき NO. 96』