『ボタニカル・ライフ』

いとうせいこう

新潮社

2004年2月発売


40歳がくる!40歳がきた!前から兆候はあった。散歩を楽しんだり、ロゴの入った服を着なくなったり、部屋に花を飾るようになったり。いくらお金を溜め込んだところで、向こうには持っていけないことに薄々感づいてきたというのもあるんだろう。モノよりコト。この我が身に一つでもいい思いを刻み込むしかない。のんびり旅行に行きたいと思うことにも、もはや疑いの余地も無い。神奈川「箱根本箱」で購入。ナントカトラベルを使わず行ったよ俺は。

 

前髪ぱっつん。著者近影こそ穏やかに写っているけれど、それがさらに彼の狂気を倍加させてすらいた。擁護して言えば虎の穴。超面白かったから。しかし実際は、私利私欲のためだけに拷問、虐待、理不尽な行為を植物に繰り返す日々。何をとち狂ったか、そんな自身の悪行三昧を本にまとめてこの世に送り出してしまった。物言わぬ植物だからこその書き手の身勝手な解釈が痛感愉快極まりなし。奇跡のように美しい文章が時たま生えていることもある。植物、果ては金魚やメダカたちが被害者の会を結成することを切に願いながら本を閉じた。植物生活。始めてみようかな。俺はこんなことをしたりなんかしないと心に固く誓ったうえで。

 

 

『本の街あるき NO. 125』